静岡インテリアコーディネーター協会

2008年度の活動

SiC生活者講座「今、五感に訴えるエモーショナルな建築。」

中村拓志氏

2008年11月27日

ホテルセンチュリー静岡 4Fクリスタルルーム

会員/29名、賛助会員/3名、他/1名、一般/98名 合計:131名

塩谷弘子

Eグループ(下山明美 齋藤泰江 北山富喜子 村松春葉 Devant中尾)東康子

「エモーショナル」をキーワードに2時間の講演

黒の革ジャンに黄色のニットをのぞかせて会場に現れた中村拓志氏。その笑顔は世代の垣根を越え会場をあたたかい空気で満たしました。当日は、若い方から年配の方まで、又、職業も学生、主婦、建築インテリア関係など、多方面にわたる方に参加して頂き、中村拓志先生には、「エモーショナル」をキーワードに2時間講演して頂きました。

実際に手掛けられた現場のスライドをみながらのお話。それらに込められたコンセプト、メッセージを、丁寧に言葉を選びながら、聞くものに伝えようとする姿勢は、その場限りではない、奇をてらったのではない、そして根っこをしっかりと持っている事を、はっきりと感じました。そして中村拓志ワールドにどんどん引き込まれていきました。

講演では、「ランバンブティック銀座」の設計の考え方、施行に関わる工夫。そして建築やインテリアが人間に与える気分(エモーショナルな観点)を重視。フランスのスイーツの店の内装が与える甘いムード、化粧品ショップの香水を感じさせるカラー使いなどを紹介。他にも、100坪の間仕切りがないのにプライベートを感じる美容室「エッジ ロータス」。住む人をあったかく包む都心の狭小住宅「House SH」。北国のネックレスのビーズを繋げる様に配した「Necklace house」。東京恵比寿の「Dancing trees, Singing birds」は15mの木々を樹木医を入れ、木々と住宅、暮らしが相互に溶け合える様な集合住宅で、何号室ではなく、プールハウス、ライブラリハウス、などと名付け、エモーショナルな仕掛けをされています。そして、年代別に本がセレクトされている「SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS」には、是非行ってみて下さいと付け加えられました。

「建築は人間が住む近い場所で考え、その人の気持ちや感情に近づければ住み手にとって生き生きしたものが出来る」と締めくくられました。

<特別寄稿> SiC顧問(静岡大学名誉教授) 外山知徳
パラダイムとしての「気分」−− 生活者講座を聞いて ―

今年の生活者講座「今、五感に訴えるエモーショナルな建築。」は、若き建築家・中村拓志氏が、処女作「ランバンブティック銀座」をはじめ、「Lotus Beauty Salon」「House SH」「Dancing tree, Singing birds」ほかの話題作をスライドで紹介しながら、ご自分の建築に寄せる思いやデザイン・コンセプトを、控えめながら余すところなく語ってくれました。作品に見られる奇抜な形態も、なぜそうなのかという合理的な根拠と、製作技術をふまえたディテールによって裏付けられた、人間の五感と環境に優しいデザインであることが説き明かされました。

そして、その作品にうかがわれる奇抜さは、実は中村さんの「近代建築は、建築が人に与える気分について考えてこなかった」という批判に基づく、近代建築が組み立ててきたディテールがもつ合理性をもう一度組み立て直してみようとする試みに起因するようでした。つまり、鋼板のサンドイッチパネルにあけられた無数の穴にアクリのペレットを直に嵌め込んだ「ランバンブティック銀座」のファサードも、サッシのない窓をつくりたかったという新しいディテールの追求の結果であり、「Dancing tree, Singing birds」の形態も、敷地に生えていた樹木を残そうと、試掘して根の張り具合を確認し、枝を測量し、その振れ具合までシミュレーションした上で決めたという。奇抜さを求めたのではなく、新しいパラダイムを目指した設計手法の追求の結果が、在来のパラダイムの目には奇抜に映るだけのことなのだということに、妙に納得させられました。

ところで、こうして語られていたのはまさしく建築でありながら、生活者講座にふさわしい親近感がある講演内容でした。それは「結露を思わせる細工が施された、思わず手の平で触れたくなるガラス板」のように、中村さんが五感に訴えるエモーショナルなマテリアルの追求を指向しているからなのでしょうか。「建築を考えるということは、結局は人間を考えることなのだ」という彼のまとめの言葉にそれが集約されていると思いました。

私は若い頃、人と関わることの煩わしさを避けて、モノづくりの一つとして建築の道を選びましたが、結局人間をどうとらえるかが建築の道と、中村さんと同じような思いに立ち至ったことを久しぶりに思い出しました。インテリアコーディネーターの皆さんにとっては、デザインって何をどういうふうにしていくことなのか、対象との関わり方を教わった貴重な2時間だったのではないかと思います。

中村さんは最後に、「ここではじめて話したこともあった」と言っていました。彼をそんな気分にさせることができた、素敵(material)な講座でした。3年後、5年後にまた静岡にお招きし、お話をうかがえるといいですね。


アンケート結果

アンケート回収96枚(回収率約73%)
男性28名 女性67名
年齢:20代(男性3/女性15)30代(男性5/女性13)40代(男性8/女性18)50代(男性3/女性10)60代(男性2/女性5)70代(男性2)
初めての参加:60名 (今後も参加したい43/わからない13)
2回目以上の参加:34名 (今後も参加したい34)
職業別:建築設計IC等40名 会社員16名 主婦4名 自営4名
以下各1名(学生/教員/会社役員/会社社長/家具屋/屋外木製品製造/新聞発行/アーティスト/空間デザイナー/相談員/会主宰者/無職)
注:皆さんが全てに回答している訳ではないので、数字として合わない所があります。


アンケートから「中村先生にメッセージを!」より抜粋

     
  • 今迄の常識を変える機会を得ました。新しい時代をつくる開眼を、強烈な印象を得ました。建築を考える事は、人を考える事と言われた事が印象に残りました。(77歳男性)
  • どの作品もぬくもりを感じました。学校で建築を学んでいますが、私も愛が生まれる様な作品を作れる様に心がけたいと思います。(23歳 女性 学生)
  •  
  • 今日は、いろいろな建築を実際に目の前にある様に体感でき大変楽しかった。1つ1つ全く新しい発想で、あたたかく気持ちの安らぐ夢の様な世界に私も住んでみたいと思いました。自然は神。満足度100%!(31歳 女性 会社員
  • )  
  • 中村先生が建築の中にいる人の居心地や、気分をとても大事に考えていらっしゃるのが伝わってきました。感性や人間性がとても素敵で、お話が聞けて光栄でした。何度か胸が熱くなりました。(39歳 女性 専業主婦)

中村拓志氏を囲んでの懇親会

場所:ホテルセンチュリー4Fフリージア
参加人数:会員16名  賛助会員2名  講師・顧問  一般1名 合計21名

貴重な時間を過ごしました!

お忙しい中村先生ですが、「少しだけでも、参加頂けますか?」のお願いに、「では、少しだけ」と参加頂きました。短い時間でしたが私たち参加者と気さくに打ち解けて頂いて、とても楽しい時間を持てました。まずは写真をと焦るこちらの都合も快く受けて頂き、参加者は、名刺交換できてにんまりする者、著書「恋する建築」を持ち出して、「サインを・・・」とお願いする者と、皆この機会を逃しては!とかなり積極的になっていました。若者らしい屈託のなさと、他を思いやる成熟した大人の部分と両方を持ち合わせた、建築家としては勿論、人としての魅力を十分に感じられた時間でした。

後記

「どうしてSiCの依頼をお引き受け下さったんですか?」とお訪ねすると、ちょっとの間を置いて「どうしてでしょうね〜」と中村氏。「ご縁でしょうかねぇ?」と無理矢理な私のまとめににっこり笑われて(苦笑?)いましたが、アンケートで「静岡に又来て下さい!」との声も一人ならずありましたし、このご縁の糸を切らさずに、静岡とのつながりを保っていっていけたらいいなと感じました。
当日お手伝い頂きました皆様、又、生活者講座を広く宣伝して頂きました会員の皆様有り難うございました。感謝です。

(塩谷弘子記)


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